最遠寺黎(ジュリィ・ミルセナルディス)

最遠寺黎(ジュリィ・ミルセナルディス)


名前:最遠寺黎(ジュリィ・ミルセナルディス)
種:人間⇒魔族
時代:紀元前3世紀以降
血縁者:叉紅夜(子)・レイギルア(兄)
地域:トルメスト、アジェステリア、日本
出典:『対ノ双眸』『千禍ノ哭』『黎明ノ王』『終ノ刻印』『銀ノ鏡界』

初代魔王の妹

 本名、ジュリィ・ミルセナルディス。最遠寺黎とは日本で活動する際の偽名である。

 最初の魔王であるレイギルアの実妹であり、兄同様、二人の観測者の認識力を身に受けていた。

 兄に力を与えたエクセリアとレネスティアに敬意を払いながらも、姉として長く二人を世話していたが、新たにレイギルアが迎え入れたユラスティーグが現れてより、悲劇へと物語は突き進んでいく。

 自分が愛していた兄が、ユラスティーグを選んだこと。そのユラスティーグが兄を拒絶したことで、ジュリィの嫉妬は二人を殺し合いにまで発展させてしまう。結果、ユラスティーグは重傷を負うが、レイギルアによって命を救われる。しかしこれが原因となって、レイギルアは死亡。ジュリィはどうしようもなくユラスティーグを憎み、その後を追うことになる。レイギルアが死んだことによって、二人の観測者の認識から外れたジュリィは、生きるためにそのすべをレネスティアに求めた。彼女は他者から生気を奪い糧とする方法を教え、ジュリィはそれを実践して実に二千年以上、生き続けることになる。

二千年の孤独

 その二千年は、彼女にとって大半が苦しいものだった。レネスティアより得た方法では、肉体的な不老を得ることができても、精神の老化を止めることができなかったからである。実際、魔王となった歴代の王達も、肉体的には不老であったにも関わらず、およそ二百年前後でその生を終えた者が多い。

 ジュリィ自身、そのことに気づいたのはレイギルアが死んで数十年とたたない時であった。そのため精神の老化を避けようと、彼女は様々な手段を試している。ユラスティーグを待つまでの時間を活動せず、眠りにつくことが最善であったため、また目覚めたユラスティーグに対する武器とするためにアトラ・ハシースという組織を作り上げ、安全に数百年を眠れる場所を用意したりもした。時には老化した精神を逆行させるなどという危険な方法を用い、精神の崩壊を招きそうになったこともあったが、その度にどうにか蘇生させ、今に至っている。

一度目の目覚め

 千年後のユラスティーグの目覚めに際して、ジュリィアトラ・ハシースなどの組織を作り上げ、その準備と整えていた。しかし予想以上のユラスティーグの暴走とレネスティアの介入によって、ジュリィは一切の手出しもできず、水泡に帰す。このアトラ・ハシースは、ユラスティーグを追い詰めるためにだけ作り上げた組織であったが、結局その目的を果たすことは無かった。しかし対異端組織として、現代に至るまでその影響を色濃く残している。

 ユラスティーグに触れることすら叶わずにその存在を見失ってしまったジュリィは、半ば絶望していた。そんな折に現れたのがエルオードで、自分の身体を人形に造り替えてくれることを条件に、忠誠を尽くすというものだった。ジュリィは彼を受け入れ手足とし、その補佐もあって再びユラスティーグが目覚める時を待ち続けることになる。

ユラスティーグとの再会

 待ち続けた年月の間に、ジュリィはユラスティーグの封印を手に入れることになる。しかしレネスティアの憎悪の塊によって封印されていたため、手中にありながらも手を出すことは敵わなかった。しかしレネスティア以外にその封印を解くことのできるエクセリアに献身的に尽くすことで、千年後、その望みは叶えられることになった。

 封印は解かれ、日本という国に逃げ込んだユラスティーグを追って、彼女も来日する。日本は極東の地でアトラ・ハシースの影響力が及ばない地でもあり、在地の組織を利用するために最遠寺家に接触していたエルオードの働きもあって、最遠寺黎という名を得た。そして京都での目撃情報に基づいて、柴城興信所に所員として派遣されることになる。また一方で、この国の出身である九曜茜をアトラ・ハシースからの追手として差し向けさせ、共闘体制を築こうともした。

決着と和解

 ユラスティーグの件に関してはエクセリアの助力もあり、徐々に追い詰めることに成功していた。しかしユラスティーグが桐生真斗という青年を殺してしまったことから、思わぬ方向に事態は流れていく。ユラスティーグを殺すための道具として復活させたはずの真斗が、ユラスティーグを敵として認識しようとせず、殺し合いはおろか仲介をしようとする始末だったのだ。利用するために認識し、復活させたエクセリアも彼の影響を受け、ユラスティーグを抹殺することを躊躇うようになっていく。それでもジュリィは一人、ユラスティーグに挑んだ。壮絶な一騎打ちの末、結局はかつてのように身を引いたユラスティーグはジュリィを一撃を受け、再び氷の中に閉ざされることになる。

 罪悪感に苛まれつつも、目的を果たしたとしたジュリィは、エクセリアへと死を望んだ。二千年という歳月の中で充分に異端な存在になっていた自分も、エクセリアの忌み嫌った存在でしかなかったことの自覚があったからである。エクセリアが戸惑う中、転機が訪れる。以前からユラスティーグに接近していたアルティージェが現れ、その封印を砕き、奪ったのだった。真斗が施していた刻印をその上から支配し、その意思をも奪ったアルティージェに対し、ジュリィはユラスティーグを奪い返す決意をする。真斗やエクセリアの協力もあってユラスティーグを取り戻したジュリィは、それ以来妹に対して矛を収めたのだった。

穏やかな死

 ジュリィの身体はこの二千年を生きてきたために脆弱である。糧とする生気の量も過去から比べれば桁違いに増え、また精神の老化もユラスティーグという目的を失ったために加速度的に進行している。生気に関してはユラスティーグが自発的に提供しているため、他者から奪うことなく安定的に補給できており、精神の老化に関しては再び自分を頼ってきたエクセリアを生き甲斐にしたことで、ある程度は抑えられてはいる。しかし確実に死に向かっているのは間違いなく、本人もそのことを受け入れている。

 この二千年の間に彼女が得た知識、技術、経験は相当なもので、特に治癒や蘇生、回復といった咒に長けており、これはネレアの知識を持つ楓をも凌駕するほど。また人形制作といった特殊な技術にも秀でており、アルティージェの元を追われたエルオードが頼ったほどである。

 柴城興信所には事件の後も所員として留まっており、現在は茜の補佐を主に行っている。所内では頼れるお姉さん。ユラスティーグとの間は多少ぎこちないものの、少なくともジュリィはそんな素振りを全くみせず、姉として振舞っている。所長である定のことを気に入っており、また彼もジュリィの能力を認め、秘書として彼の実家である関東に同行させることもしばしばある。もっともそのことをアルティージェは気に入らないらしく、二人の仲は非常に険悪である。

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