『ペリペティアの福音』 初めに

 今回の書評は比較的古い作品からです。
 私は同じ小説を時間をおいて何度も何度も読み返す性質なのですが、この本は今でもたまに読み返しています。

 『ペリペティアの福音』
 秋山完先生の作品で、ソノラマ文庫から出版された作品です。朝日ソノラマは2007年に廃業されたため、レーベルは朝日文庫・ソノラマセレクションやソノラマノベルスに引き継がれていますが、この作品に関しては今ではなかなか入手困難かもしれません。

 作品は1998年発行されたもので、私自身、ひょんなことから手に入れた作品でした。当時私は同じ庄司卓先生の『倒凶十将伝』という小説を読んでいました(私が多大な影響を受けた作品の一つです)が、そのイラストレーターをされている結賀さとる先生が『ペリペティアの福音』でもイラストを担当されており、それがきっかけで読んでみようということになった作品でした。そのため内容などろくに確認もせず、しかもブックオフで中古でまとめ買いした程度のきかっけだったわけです。

 そんな動機で買ったものですから、積極的に読む気も無く、読んでみてはいいが最初の印象は何か小難しくて読みにくいなあ、でした。しかもSF。当時私はそんなにSFは読みなれていなかったので、余計にそう感じたわけです。で、一年以上は読まれることなく放置していました。ところがある日、本棚の整理をしていてこの本が出てきて、そういえばこんなものもあったなあとぺらぺらと読み始めたら……止まらなくなりました。その後何度も読み返し、読めば読むほど味がある、スルメ本だったわけです。

 最初読みにくい、と思ったのは、会話文の文章に続けて改行することなく地の文が続くことがあり、そのためページあたりの字数が増え、読みにくいと感じたわけです。これはまあ、面白い、と感じた勢いの前にはさほどの欠点にはなりませんでした。

 小難しい、と感じたのは、作者の知識が豊富で当時の私ではまるでついていけなかったからです。この作品の特徴は、メインはスペースオペラちっくなSFなのですが、ファンタジー要素もあり、神話や伝承の類をふんだんに散りばめ、更にはメルヘン要素もあって、詩的な要素もあり。ついでに有名なアニメ等からの引用も随所にあったりと、なかなか重層的な仕上がりになっています。今でこそ理解できるそういった要素も、最初はとっつきにくい、と感じてしまった要因だったかもしれません。

 ともあれ自分の中では不朽の名作だと思っているので、作品に触れた当時のこともよく覚えているわけですが、それはさておき前書きはここまでして、作品の紹介とまいりましょう。

 “銀河最大の葬祭社団ヨミ・クーリエ社の新米葬祭司補ティックは、宇宙会戦で犠牲になった人々の遺灰を散灰するため惑星ペリペティアへと向かっていた。そんなティックのもとに届けられた枢機卿からの命令書には、歴史的なイベントになるであろうフォークト大帝の葬儀を、怪我で赴任できなくなった最高大司教の代理としてティックが祭司するようにとあるではないか!しかも彼の補佐役としてやって来た尼僧は一見、可憐な美少女だが、実は―!? SFメルヘンの旗手が放つ、感動長編。”   ―ペリペティアの福音 上 聖墓偏より―

 ざっくりとしたあらすじはこんな感じで、主人公は何と葬儀屋の新米葬祭司補。舞台はスペースオペラなのに何故に葬儀屋……と思うところですが、戦争には死がつきもので、となると当然葬儀屋の出番もあるというわけです。普通のスペオペではまず描かれない、まさに裏側から描かれた作品、ともいえるでしょう。
 この作品は上中下と三巻構成で、かなり読み応えのあるボリュームになっています。また秋山完先生の作品は色々ありますが、全て同じ世界観上で語られており、この『ペリペティアの福音』もその中の一つです。それぞれ時代の開きがかなりあるのですが、遠い作品同士でも微妙に伏線があったり、近い作品では同じ登場人物が顔を出したりしています。この手法は私が影響を大きく受けた一つでして、ibisノベルの作品は全て同様の構成になっているのは、まさにその典型ですね。

 是非読んでいただきたい作品ですが、前述したように今では入手困難なことは難点。それでももし目にする機会があれば、目を通してもらいたいです。
 この作品に限らず古くて入手困難な作品ほど、電子書籍化にしてもらいたいものですね。