ibisノベルとは

ibisノベルの世界観概略

 ibisノベルとは、同一世界観にて描かれた年代記。

 もともと伝奇系の現代を舞台にしたオリジナル小説だったが、作者があれやこれやと過去の設定を考えているうちに、いわゆるクロニクルのようになってしまった一連の作品群を、ibisノベルというレーベルにて発表したものである。

 当サイトで扱っている文章は、2010年に発行した『千約聖書』-ibis作品設定資料大全-の内容を中心に記述した。
 以下、各作品についての概要。

草創期 出典/『対ノ双眸』

・観測者の目覚め

 存在は、何かに認識されることによって初めて“意味”を持つ。認識されることがなければそれは存在しないに等しい。その“意味”を最初に発生させたとされる存在が、根源二祖である。エクセリアとレネスティア。当時まだ名前すら無かった二人の姉妹は、まずお互いを認識することから始め、そして徐々に世界に“意味”を与えていく。
 全ストーリーを通してキーパーソンとなる二人の姉妹の目覚めが、全ての発端であり、始まりだった。

・異端の創始者

 二人が目覚めてから、どれほど時が流れたのか分からないほどの歳月が経過した頃。二人は初めてある特定の人間に興味を持つようになる。その主な対象がレイギルア・ミルセナルディスという青年であり、後世に最初の魔王だと伝えられることになる人物である。しかしこの頃の“興味の対象”は非常に曖昧であり、実際にはレイギルアを中心とする周囲の人間全て、に向いていた。その中でもレイギルアに次いで影響を受けたのが、彼の妹であるジュリィ・ミルセナルディスである。
彼らの血脈が、最初の異端の原点となる。

・最初の終幕

 レイギルアを兄と慕い、その家族の中に二人の姉妹が溶け込んでから百年以上が経過して。姉妹のうち、姉をエクセリアと、妹をレネスティアと名付け、その二人の影響力を最も強く受けたレイギルアはその一帯の支配者として君臨するに至るが、やがて変化が訪れることになる。
 奴隷の子でありながら見初められ、姉妹の末席まで用意されたユラスティーグという少女。彼女が妹としてでなく、一人の女としてレイギルアに愛されてしまったことで、彼を中心とする集合体に亀裂が生まれてしまう。それを決定的にしたのは、レイギルアをユラスティーグが拒絶したことだった。
 レイギルアを密かに愛していた妹のジュリィとユラスティーグの間の確執は殺し合いにまで至ってしまい、ユラスティーグは重傷を負って死にかけてしまう。これを後に三大禁咒の一つとされる千年継承禁咒を用い、レイギルアは彼女を救うが、その代償は己が命だった。
 レイギルアは死亡。ユラスティーグは不完全な継承咒のために千年の眠りにつき、それを許すことのできなかったジュリィはレネスティアに懇願し、力を得て、千年の時を越える決意をする。
 傍観していた姉妹は、レイギルアの集合体の崩壊と共に姿を消す。

継承戦争史Ⅰ 出典/『刻印ノ王』

・アトラ・ハシースの創設

 レネスティアより得たすべをもって生きながらえていたジュリィ、後に黒賢者と呼ばれる協力者と共に、僧会に寄生。アトラ・ハシースを創設する。その目的は、恐らく強大な力と共に甦ってくるであろう、ユラスティーグを殺すための力を蓄えるため。しかし表向きは、この頃溢れ出てきた異端に対抗する、という目的であった。
 ジュリィ、アトラ・ハシースのトップとして君臨するも、決して表には出ず、暗躍していく。

・シュレストとディーネスカの刻印

 いわゆる『継承戦争史』とされる文献は大きく三つに分かれて記述されており、その最初の章が魔王シュレストに関してである。
 すでにこの頃別々に行動していた姉妹の一人、レネスティア。彼女に出会った偶然を逃さず、己が家に伝わる秘伝の支配の紋章をレネスティアへと刻印したシュレストは、彼女の力をもって名実共に二代目の魔王となる。この時代にいわゆる魔王の血を引く魔族が増え、巷に異端と呼ばれる者が溢れていくようになった。前述したアトラ・ハシースが反作用的に力をつけていく原因ともなる。

継承戦争史Ⅱ 出典/『終ノ後継』

・継承戦争勃発

 歴代最強と謳われるシュレスト。全てを得たように見え、何人にも侵すことのできない王として君臨するも、唯一どうにもならないことがあった。シュレストはレネスティアを支配するにあたって、一つの契約をしていた。それはあらゆる意味で“最強”になること。そうなったかに見えたシュレストだったが、肝心のレネスティアは一定の距離を保ったままシュレストにそれ以上近づいてはこない。そういった要因もあって、己の“最強”に満足できなかったシュレストは、やがてそれを断念し、後継者にそれを求めるようになる。結果、シュレストの実子八人で争うディーネスカ継承戦争が勃発した。

・アルティージェとナウゼル

 シュレストの後継を巡り、あるいは協力し、あるいは敵対して骨肉の争いが展開される。最後に残ったのは、後継者候補の最右翼とされていた長子ナウゼルで、最大勢力でもあった。そして対するは、末子のアルティージェ。終始不利であったアルティージェであったものの、激戦の末、運にも助けられて、これを降す。継承戦争に勝利したアルティージェは、完全な千年継承禁咒により、これまでシュレストが得た力の全てを受け継ぐことになる。そしてそれは、レネスティアを必要としない単独の王の誕生でもあった。

継承戦争史Ⅲ 出典/『銀ノ烙印』

・エクセリアとネレア

 レネスティアと離れながらも、妹をきっかけとして巻き起こした世界の大きな変化を、エクセリアは杞憂をもって眺めていた。自分達はあくまでただの観測者であるべきで、不必要に干渉すべきでないとかつての経験からそう感じていたエクセリアは、レネスティアによって生まれてしまった異端という“本来ならば在らざるもの”が増えていくことに危機感を覚え、これの抹消を決意する。
 一人の青年とネレアと呼ばれる契約したエクセリアは、当時最大の異端であったアルティージェを殺そうとする。青年の名はエルオード。アルティージェに妻を殺され、その復讐心を利用しての策略であった。

・ベファーリアの誕生と抹殺

 アルティージェの力を正しく認識していたエルオードは、あらゆる手段をもってこれを殺そうと試みる。その中に一つに、契約者であるエクセリアが考案しながらも封印した双鏡禁咒があった。
 彼は対アルティージェの切り札として、娘であるベファーリアに双鏡禁咒を用い、エクセリアの存在を投射し同調させることに成功するものの、そのあまりの存在力を大きさに懸念を覚え、これを殺害してしまう。
 未だ力を使い切れないアルティージェ、エルオードを相手にかつてないほど苦戦するものの、エルオードが用意していたもう一つの切り札である禁咒“千絲ノ封”を逆手に取り、辛くも勝利。エルオードは敗北を認め、死を覚悟したが、アルティージェは命を取ることなく臣として傍に置くようになる。

千年ドラゴンの伝説 出典/『千禍ノ哭』

・クリーンセスとレネスティア

 魔王シュレストの残した異端が収まってきた頃。これまでただの興味や仮の支配のみによって動いていたレネスティアが、自覚は無いものの、一人の男に恋するようになる。始まりはクリーンセスという少年が、レネスティアに恋したことから始まった。少年の積極的な行動と好意に、彼女は戸惑いながらも居心地の良さを感じていく。特に応えることは無かったが、それでもクリーンセスが成人する頃には自らもその姿を合わせ、魔王の契約を結ぶまでになっていた。
 ゼルディアの覇権を巡ってベデゥセーウ家と激戦が続く一方で、どこか世間離れしたレネスティアとそれに振り回されるクリーンセスの、どこか滑稽でほのぼのとした月日も流れていく。

・ユラスティーグの目覚め

 最初の魔王が死して千年。眠り続けていたユラスティーグが千年ドラゴンとして目覚める。千年の眠りと千年継承禁咒は、彼女にかつてない力を与えていた。しかしその代償によって、ユラスティーグは狂い、当時最大の災厄と化す。
 ユラスティーグがレネスティアのかつての義妹だと知ったクリーンセス、レネスティアのためにとユラスティーグを救おうとする。狂化し、手のつけられない状態となっていたユラスティーグを止めようとクリーンセスは闘うも、あまりの力の前に返り討ちに合ってしまう。
 クリーンセスが死んだことで、レネスティアが逆上。ユラスティーグを徹底的に嬲りながら、両者は歴史から消えてしまう。
 この思わぬ事件により、千年を待ち続けていたジュリィは呆然自失した。エルオードを失ったエクセリアはこの頃ジュリィに接近し、アトラ・ハシースはジュリィの本来の目的のために使われることなく、エクセリアのために用いられるようになっていく。

異端の滅亡 出典/『黎明ノ王』

・イリス生誕

 クリーンセスが死亡してから約二百年。彼の死がきっかけで初めて“死”を認識してしまったレネスティアは、それが自然に具現する前にと、自ら生み出すことを決意する。その生贄として選ばれたのがフォルセスカという青年で、レネスティアは彼と契約し、魔王とならしめ、その上で死神を身篭った。
 そして一人の女児を出産。イリスと名付けられた。そのまま両親の元で育てられるかにみえたが、この状況を危惧していたエクセリアによって奪われ、アトラ・ハシースにて対異端の切り札として育てられることになる。

・フォルセスカの死と千絲ノ封

 成長したイリスと、自分が父親であることを告げないフォルセスカとの死闘が、百年に渡って続く。その間に大半の異端はイリスによって根絶やしにされ、フォルセスカもまたその命のほとんどを削られていた。
 その百年の後半、ずっとフォルセスカを意識し続けてきたイリスは、ついに彼を前に戦うことを放棄。その代償として、アトラ・ハシースによって投獄され、“千絲ノ封”によって封印されることになる。
 しかしその頃エクセリアによって生み出されていたネレアによって、異端は確実に追い詰められ、そしてフォルセスカもまたその刃の前に倒れた。その光景を目に焼き付けながら、アトラ・ハシースやネレアを恨みつつ、イリスは千年の眠りにつくのである。

九曜と鬼 出典/『鬼門ノ陣』

・九曜家の始まり

 イリスが生まれ、フォルセスカが王として君臨していた同時期の極東の島国にて、一つの名前が歴史に姿を現す。その名は九曜。元々は山岳修験から始まった九曜は、叡山延暦寺の末寺となりながら力を蓄え、京の都と適度な距離を置きながら独自の進化を遂げていく。
そして九曜にとって試練ともいえる戦いが、三鬼将との対峙だった。

・三鬼将の末路

 極東の島国にて最大の異端といえば、“鬼”の一族である。当時隆盛を極めていたのが三鬼と呼ばれる鬼門の一族で、それぞれ“鬼龍”“鬼梗”“鬼燈”という名を冠し、それら束ねる長らは三鬼将と称されていた。
 国家鎮護を任とする組織は三鬼将と戦うも、次々に滅ぼされていく。都に迫る鬼門の勢力圏を辛うじて食い止めたのが、九曜だった。
 両者の争いは熾烈を極め、常に劣勢であった九曜も滅亡の危機に追い込まれるが、やがて転機が訪れることになる。三鬼将のうち、鬼龍と鬼燈が九曜へと翻ったのだった。その後勢力を盛り返した九曜は、都の陰陽師の助力も得て、鬼梗の一族を滅ぼすことに成功する。
 鬼龍と鬼燈は九曜へと溶け込み鬼の血筋の存続させつつこれに協力し、九曜はこの後、極東の対異端組織としては最大の規模へと成長していくのである。

現代世界Ⅰ 出典/『悠遠ノ絲』

・イリスの封印解除

 16世紀に入り、当時の政情不安からアトラ・ハシース最大の禁忌であった死神の封印が、一部のラルティーヌ家の者によって極東の土地へと移送されることになる。移送先である日本は当時、南蛮貿易で異国の文化の流入があり、その機にリオネル・ラルティーヌはその島国の内陸まで進み、その地に栄えていた九曜家に目をつけ、寄生。九曜はラルティーヌの血筋ごと、死神の封印を受け継ぐことになっていく。
 そしてさらに四百年が経過し、封印の期限である千年が尽きた。西暦1999年、封印城ブラフト・ダーンにてイリスは目覚めるが、それは完全ではなかった。力の大半は未だ封じられたままで、しかも肉体そのものを失っていたのである。イリスは仮初の姿のまま、自分の身体を求めて日本へとやってくる。そこで出会う、これまで自分を封印し続けてきた“千絲ノ封”を担う少年と出会う。彼女はその少年、和泉裄也に何かを重ねつつ、その傍に在るようになる。かつては敵であった異端の少女レダや、かつては味方であったアトラ・ハシースのあのネレアを彷彿とさせる九曜楓。彼女達の因縁が絡み合う形で、イリスにとって千年前に果たせなかった一つの終幕が訪れる。

現代世界Ⅱ 出典/『黒衣ノ業』

・現代のアトラ・ハシース

 かつて異端の繁栄に比例するかのようにその力を伸ばしていったアトラ・ハシースは、千年前に主だった異端が死神によって根絶やしにされたことにより、徐々にその力を失いつつあった。
 一方で衰えたとはいえ世界最大規模の力を持った組織であることに変わりはなく、そこに蓄えられた知識も、人が扱うにはあまりにも危険で深層に位置するものが多くあった。

・ネレアの書とD計画

 歴代のアトラ・ハシースの中でも特に有名なネレア・ラルティーヌの残したとされる遺産、ネレアの書。その研究は数百年を越えて続けられてきたが、現代に至ってそれはD計画という形を為すことになる。ネレアの書の研究から派生したこの計画は、クリストフ・アーレストによって始められ、ギルス・ラーバーによって引き継がれていく。
そんな中、D計画の被験体が逃走したことから、事は明るみに出ることになる。調査を命じられたリーゼ・クリストとシャレム・アーレストの二人は、やがてギルス・ラーバーに辿り着くものの、突きつけられる真実に追い込まれていく。混戦の末にギルスを倒すことはできたが、D計画を後押し、ギルスに協力していた何者かの存在までは行く着くことできなかった。
 一方で自分の思惑のためにアトラ・ハシースに寄生し続けてきたエルオードは、今回の事件でリーゼの正体を見極め、ユラスティーグの封印を解くようにエクセリアに進言することになる。

現代世界Ⅲ 出典/『終ノ刻印』

・ユラスティーグの封印解除

 イリスが目覚めてより数年後。もう一人、眠りについていた少女が目覚めた。かつて災厄と化していたユラスティーグは、目覚めたものの記憶を失い、封印されていたアトラ・ハシースより逃げ出す。
 追手に追われながら、逃亡途中で出会った少女を頼りに、日本まで辿り着く。一旦正常化していた精神であったが、逃亡の間に徐々に狂化し始めていた。日本に着いた頃にはすでに快楽殺人を繰り返すようになっており、それが原因で桐生真斗と出会う。真斗を殺すものの、その際に刻まれた刻印によって、それ以降、奇妙な生活が始まるようになった。

・行き着く刻印

 ユラスティーグが最初に目覚めた時に復讐を果たせなかったジュリィは、半ば諦めながらもこの時を待っていた。ジュリィはユラスティーグを追って日本へと渡り、エクセリアの協力を得て真斗を利用し、ユラスティーグを殺そうとする。それに反抗しながらも結局はかつてのようの自己犠牲を選んでしまうユラスティーグに、ジュリィはやがて戦意を殺がれ、真斗の仲介もあり、最終的に和解した。
 しかしその二人の姉妹の一方で揺れ動いていたのがエクセリアだった。かつて一緒に暮らした二人を見、そして真斗という新しい存在によって、過去の自分とこれからの自分の間で思い悩む。それを代弁するかのようにぶつかり合うかつての契約者であるエルオードと真斗の戦いを経て、刻印を身に受けたエクセリアは、未来を選ぶことになるのである。

現代世界Ⅳ 出典/『銀ノ鏡界』

・ベファーリアの復活

 二度、少女は父親に殺された。そして三度目覚めた少女はすでにこの世界に自分の居場所を見出してはいなかった。そんな少女が一人の少年と出会う。紫堂夕貴と名乗った少年とベファーリアは、お互いの目的のためにお互いを利用していくことになる。

・双鏡禁咒

 九曜司の過去の所業に端を発した九曜の後継者騒動は、夕貴の画策もありひどく混迷した。徐々に九曜を手中に収めていく一方で、ベファーリアを目覚めさせた存在が動き出す。D計画という負の遺産、サナト・ゼフィリアード。そしてレネスティアの負の遺産であるクェイガ・アーレスト。共に世界を滅ぼそうともちかけてくる二人に、同じくこの世界に居場所を見失っていたベファーリアは、思い悩みながらも一つの決断するのだった。