カテゴリー:黎明ノ王

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  • 2016.10.29

第27話 手に入れたもの

「もう行くの?」  いつものように子犬をじゃれ付かせてやってきた少女は、珍しくいつもと違う表情を浮かべていた。  名残惜しい――そんな感じの、顔。  そう思うのは自分の勝手な解釈かもしれないなと、ブライゼンは何となく苦笑する。 「ドゥーク?」  きょとん、と首を傾げるアルティージェへと、何でもない、と彼は首を振った。 「それで、結局どうすることにしたの?」 「せっかく助けていただいた命ではあるが、 […]

  • 2016.10.28

第26話 ある条件

 ゼル・ゼデス城のすぐ外に、大きな湖沼がある。その一部が不自然に抉れてはいたが、今では静かな雰囲気をたたえた場所だ。  その近くまでやってきていたレダ・エルネレイスは、何かを捜すようにきょろきょろと周囲を見渡しながら歩いていた。  ブラフト・ダーン異端裁定より数週間。一旦レ・ネルシスまで退き、そこからゼル・ゼデスへと、フォルセスカの案内によって一同は無事に辿り着くことができたのである。  その後の […]

  • 2016.10.26

第25話 アルティージェ②

 身体がまともに動くようになってから、ブライゼンはようやく外に出られるようになった。  ちょうど長雨もやみ、青空がやけに眩しい。  彼は湿った地面の上に佇んで、今まで自分がいた建物を見上げてみる。  小さな、古城。  人の気配が全く感じられない城だったが、そこに誰もいないわけでもない。外に出るまでの間だけでも、それなりの数の人を見た。しかしそれらの人物を直接目の前にしても、やはり気配というものを感 […]

  • 2016.10.25

第24話 アルティージェ①

 空はどんよりとして、今にも雨が降り出しそうだった。  地面はぬかるんでいる。それは、ほんのさっきまで雨が降っていた証。  どうせまたすぐに降り出すのは分かっていたけれど、少女は構わずに外を歩いていた。  それは、別に自分の意思というわけでもなくて。 「まったく……あなたったらいつまでたっても子供なんだから」

  • 2016.10.24

第23話 ブラフト・ダーン異端裁定③

 その名に、黒い服の少女は反応した。  信じられないくらいに明確に。 (……名は残しておいてくれたというわけか)  あの夜、赤子を奪った少女の顔を思い出しながら、皮肉げにフォルセスカは思った。  しかし経緯はどうあれ、かつて自分のつけた名に振り向いてくれたことは、やはり嬉しかったのかもしれない。  そのせいか、先ほどまで厳しかった彼の表情も、どこか緩んでいた。

  • 2016.10.23

第22話 ブラフト・ダーン異端裁定②

 やはり、相手は強い。  フォルセスカはようやく三人目を切り伏せたが、ただの僧兵を相手にするのとは比べ物にならない時間を要してしまった。  それでも彼自身に未だ傷は無く、疲れもみえない。レネスティアとの契約によって、この身体はもはや完全に人間のそれではなくなったのだろう。普段に実感は無いが、今は頼もしき限りだ。  だがアトラ・ハシースの者は、まだまだいる。  果たしてこの先どうなるか……。  その […]

  • 2016.10.22

第21話 ブラフト・ダーン異端裁定①

 ブラフト・ダーン城が見えなくなってから、どれほど時間が経過しただろうか。  見えないと分かりながらも、レダは時折振り返ることをやめることはできなかった。  今頃どうなっているのか――あそこに残った者達のことを思うと、こうして歩いていることすら罪のような気がしてくる。  それでも真っ先に脳裏に浮かぶのは、あの青年のことだ。  本当に――また無事で会えるのだろうか。

  • 2016.10.21

第20話 暗殺者

「――――!?」  プラキアに庇われ、レダは何が起こったのか一瞬分からなかった。  燭台から溢れた火が、突然自分に向かってきたのは覚えている。だがその刹那、プラキアがレダを抱きかかえるようにして庇ったのだ。 「…………」  レダを自分の身体で隠しながら、左手でその炎を受けたプラキアは、冷静に相手を見ていた。  咄嗟に張った結界のおかげで炎の直撃は免れたのだが、その威力はかざした左の掌に、火傷の跡を […]

  • 2016.10.20

第19話 忍び寄るもの

「おや。これはブライゼン殿……姿を見ないと思ったら、こんな所におられたのか」  夜風の当たるテラスへと出たフォルセスカは、すでにその場にいた人物へと声をかける。  彼も正装しているが、色は相変わらずの漆黒だ。  ドゥーク・ロー・ブライゼン。  あまり表情をみせないこの青年は、ロノスティカから一番の信頼を受けている側近である。

  • 2016.10.19

第18話 舞踏会にて

 年に一度、侯爵家で催す舞踏会は、王室の行うものに比べれば見劣りするものの、ひとまず盛況のようだった。  舞踏会は今日、明日と催される予定で、周辺の貴族達の姿が大広間に見て取れる。  とはいえこれはあくまで侯爵家が個人的に主催しているもので、全ての諸侯の姿があるわけでもない。侯爵家に親しい者や、世話になったものなど――またこれからそうなりたい者などが、参加している程度である。無論、礼儀ということで […]

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