「黎明ノ王Ⅱ」カテゴリーアーカイブ

第27話 手に入れたもの

「もう行くの?」

 いつものように子犬をじゃれ付かせてやってきた少女は、珍しくいつもと違う表情を浮かべていた。
 名残惜しい――そんな感じの、顔。
 そう思うのは自分の勝手な解釈かもしれないなと、ブライゼンは何となく苦笑する。

「ドゥーク?」

 きょとん、と首を傾げるアルティージェへと、何でもない、と彼は首を振った。

「それで、結局どうすることにしたの?」
「せっかく助けていただいた命ではあるが、やはり……このまま生き長らえることはできないようだ。死に場所でも……捜すつもりだ」
「そう……。では戦うのね」
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第26話 ある条件

 ゼル・ゼデス城のすぐ外に、大きな湖沼がある。その一部が不自然に抉れてはいたが、今では静かな雰囲気をたたえた場所だ。
 その近くまでやってきていたレダ・エルネレイスは、何かを捜すようにきょろきょろと周囲を見渡しながら歩いていた。
 ブラフト・ダーン異端裁定より数週間。一旦レ・ネルシスまで退き、そこからゼル・ゼデスへと、フォルセスカの案内によって一同は無事に辿り着くことができたのである。
 その後の僧会軍の動きも無く、ひとまずは安全を確保できたのだった。
 ゼル・ゼデスは自然の要害に囲まれた進むに難しい場所ではあるが、ほとんど退路が無い絶地である。現在の寡兵では、大軍を前に決して安全ではなく、予断を許さない状況であることには違いなかった。
 彼女は湖沼の周りを歩きながら、ふと足を止める。
 視界に入ったのは、黒い大きな毛玉。
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第25話 アルティージェ②

 身体がまともに動くようになってから、ブライゼンはようやく外に出られるようになった。
 ちょうど長雨もやみ、青空がやけに眩しい。
 彼は湿った地面の上に佇んで、今まで自分がいた建物を見上げてみる。
 小さな、古城。
 人の気配が全く感じられない城だったが、そこに誰もいないわけでもない。外に出るまでの間だけでも、それなりの数の人を見た。しかしそれらの人物を直接目の前にしても、やはり気配というものを感じなかったことが、不気味といえば不気味であったが。
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第24話 アルティージェ①

 空はどんよりとして、今にも雨が降り出しそうだった。
 地面はぬかるんでいる。それは、ほんのさっきまで雨が降っていた証。
 どうせまたすぐに降り出すのは分かっていたけれど、少女は構わずに外を歩いていた。
 それは、別に自分の意思というわけでもなくて。

「まったく……あなたったらいつまでたっても子供なんだから」
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