カテゴリー:黎明ノ王Ⅱ

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  • 2016.12.03

第37話 ベルヌークからの要請

 バルライン男爵領・パルティーン。  その寺院内の一室で、遠地より矢継ぎ早に届けられる急報に、アルゼスは表情をしかめていた。  ロン・ハーにて奇襲を受け、初戦を敗退してからというもの、僧会軍の旗色は良くない。  現在、ドゥーク・ロー・ブライゼン率いる異端の軍は、クリセニア領境にて留まり、今のところ派遣した僧会軍に対して連戦連勝を重ねている。  といっても行われているのは、小規模な戦闘に過ぎない。

  • 2016.11.29

第36話 ブライゼンとの会見②

「――そんな、ブライゼン様!」  突然、声が割り込んだ。  我慢できなくなったレダが、口を挟んだのだ。 「フォルセスカ様は、プラキア様ですら認めた私たちの主なんです! ロノスティカ様だって、きっと……! それにブライゼン様ほどの方が、役に立たないなんてこと、ないです……。私、私は何もできなくて……」

  • 2016.11.26

第35話 ブライゼンとの会見①

「ふむ……これはまたおかしなものを持ち出してきたものだ」  小高い丘から火の手を眺めやって、フォルセスカは小さくつぶやいた。  彼の隣では、レダが不思議そうに見上げている。 「おかしなもの……って、何なんですか?」 「見てわからないかな?」 「……わからないから聞いているんですけど」 「ごもっともだな」

  • 2016.11.22

第34話 ロン・ハーの戦い

 ナルヴァリア男爵領・ロン・ハー。  クリセニアとの境となるこの場所は、普段は何も無い草原である。  しかし今夜は違っていた。  ベルヌーク率いる僧会軍の第一陣がクリセニアを臨み、陣を張っているからである。  その物々しさに、普段は領境に横行する野盗や盗賊たちも、その形を潜めていた。 「猊下、ただ今戻りました」 「ディアンか。遅かったな」

  • 2016.11.19

第33話 旅の供

 元々薄気味悪い樹海であるが、夜ともなるといっそう際立ってくる。  ゼル・ゼデスの周囲に広がる樹海は、基本的に道はない。どういうわけか異常に成長の早い密林のせいで、獣道すらできぬ始末。人が迷い込めば、恐らく生きて這い出ることは叶わないだろう。  ここはベデゥセーウの樹海と呼ばれているいわくつきの森である。  何でもかつての魔王・クリーンセスの夫人であったクェラ・ベデゥセーウが創り上げた人工の樹海で […]

  • 2016.11.15

第32話 懸念の予感

「現状では情報が少なすぎる」  大きな広間である一室に、低い声が静かに響く。  それに反応するように、アルゼスの向かいの円卓に座る初老の男が勢いよく立ち上がった。 「なればこそ申し上げているのです! ブラフト・ダーンが落ちたことは、周知の事実。ここは一刻も早く裁定軍を派遣し、事態を収拾すべきと心得る」  語気も鋭く、ベルヌークは告げる。  その様子は、いつになく余裕が無かった。  ――理由は、この […]

  • 2016.11.12

第31話 小悪魔、それとも悪魔か

 空は晴天で、ひどく天気はいい。  そよぐ風は心地良く、ゆらめく森のざわめきは、今では子守唄のようにすら響く。  しかしだからといって眠ってしまうのはどうかと……起こされて、レダは我ながら自分が情けなくなってしまっていた。  しかも起こしてくれた相手というのは、あの大きな黒い毛玉だ。  あれからどれくらい時間がたったのかは分からないが、ともかく下敷きにされたままいつの間にか眠ってしまっていたレダを […]

  • 2016.11.08

第30話 クリセニア蜂起

「ふむ……けしからぬな」  いつまでたっても戻ってこない少女のことを思って、その女性は唇を動かした。 「あの……私が捜してきましょうか?」  部屋に控えるレダと同じ侍女の言葉に、彼女はかまわぬ、と手を振る。 「事情は知れておる。じゃが妾を放っておいてまでして、とは……まこと良い度胸じゃな」  その女性――プラキア・ラウンデンバークは、ここにはいない少女へと、苦笑のようなものを零してみせた。 「やは […]

  • 2016.11.05

第29話 レダとヴァーグラフ

「…………」  暇を見つけて城を抜け出したレダは、目的の相手を前に、仁王立ちしていた。  精一杯虚勢を張って、膝が笑い出さないように気合を入れて。  ―――それでも、やはり恐い。  とうせんぼされて足を止めた黒い物体は、じいっと彼女を見下ろしている。

  • 2016.11.01

第28話 ブラフト・ダーン陥落

 あれ、を手中に得てより十一年。  自分には子はいるものの、それとはまた別のところで、あれを育ててきた。  姿形は、それこそ人と何ら変わりない。ただの、人間の少女。  ―――そう見えるというのに。  しかし明らかに、本質は違う。  違う、のだ。  それは自らの手で育て、見つめてきたことで、否応無くそう思わされている。  あれは、ひとではない、と。 「では、行くが」