カテゴリー:黎明ノ王Ⅱ

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  • 2017.01.07

第47話 血の洗礼

「これ、起きぬか」  心地良い美声に、レダは目を覚ました。  未だぼんやりとした視界には、こちらを見下ろしているプラキアの姿。 「あ、えっと……」  相手が誰であるかも忘れて、寝ぼけた声を出してしまう。 「ふむ……。再び仕事を忘れた挙句、かような場所で居眠りとは……大した身分じゃの?」  言葉と同時にぎゅうっと頬をつねられて、レダは悲鳴を上げて飛び起きる。  そしてようやく事態の把握に至った。

  • 2017.01.03

第46話 墓標の少女

 レダがフォルセスカと共に、ゼル・ゼデスに戻ってきたのは一週間ほど前のこと。  案の定、帰るなりプラキアに大目玉をくらってしまった。  思い出してみれば、確かに怒られても仕方ない。何せヴァーグラフを手懐けようと頑張っていたあの日、自分の仕事もせずに頑張りすぎて、しかもその後許しも得ずに、フォルセスカの後についていってしまったのだから。  それからというものの、この一週間休みももらえずに、普段はやら […]

  • 2016.12.31

第45話 親子

 空は徐々に青く、夜明けまで僅かだと知れる。  しかし対照的に、辺り一面は血の海だった。  今この場に、自分以外に立っている者などいない。  いや、その自分だって……。 「…………っ」  がくりと膝をつき、痛む傷跡に手を当てて、イリスは表情を歪める。

  • 2016.12.27

第44話 先輩と後輩

 分かってはいたことだが、やはり戦場とは酷い場所だ。  特に、戦いの後――屍が累々と転がる様は、見慣れたくない光景である。  勝敗としては、僧会の勝利であっただろう。  しかし為に払った犠牲は大きく、またその後に起こった凶事により、その勝利すら意味を為さぬものになってしまった。  その凶事を起こした張本人のことは、まあ後回しだ。  その前に、会っておきたい相手がいる。  もっとも生きているとも思え […]

  • 2016.12.24

第43話 惨劇の幕開け

「何だその様は」  本陣に戻ったイリスに向けられたのは、ベルヌークの冷めた一言だった。  陣は荒れに荒れ、死体で埋まってしまっている。  味方のものと、壊れた残骸に成り果てた、人形だったもの。  どう見ても僧会の兵の屍の方が多く、アトラ・ハシースの者でさえ、かなりの数が死んでいる。 「先に出した者たちも、全滅と聞いている。お前だけが帰ってきたかと思えば、片腕を失っているとはな。これではこの先使いも […]

  • 2016.12.20

第42話 ドゥーク・ロー・ブライゼン異端裁定⑤

 二人が対峙してより、どれほどの時間がたったのか。  ブライゼンがこれまでに受けた傷は、大小合わせてかなりの数だ。  流れ出た血も、もはや相当なものだろう。いかな魔族といえど、立っていられるのが不思議なほどの、重傷だった。  しかし一方のイリスも、決して無傷ではなかった。  いや、単純な傷の深さならば、彼よりも酷いものすらある。  彼女が他人の血でならばともかく、自身の血でここまで己を赤く染めたこ […]

  • 2016.12.17

第41話 ドゥーク・ロー・ブライゼン異端裁定④

「愚か者どもめ! このような所まで入り込まれよって……!」  ベルヌークの罵声も、剣戟の響く中では、決して迫力のあるものではなかった。  ブライゼンがイリスと刃を交えているころ、彼が放った半数の人形達は、その数を十数人減らされながらも、本陣であるベルヌークの元まで辿り着いていたのだ。  今まさに、目の前で味方が人形達の刃を防いでいる。  そのいくら傷つこうとも前進をやめぬ姿は、確かに異様だ。生きて […]

  • 2016.12.13

第40話 ドゥーク・ロー・ブライゼン異端裁定③

 振りかざされた剣が、ブライゼンの首筋を狙う。  ギィイイインッ!  響いた音は、彼女の一撃を受け止めた剣戟ではなく、彼がかざした剣の腹を、刃が滑っていく音。  それだけで、彼女の剣の軌道は僅かに首筋から逸れた。 「ふんっ!」  反撃は、左の拳。  至近距離で鳩尾に拳を叩き込まれ、体重の軽いイリスはあっさりと数メートルを吹き飛んでしまう。

  • 2016.12.10

第39話 ドゥーク・ロー・ブライゼン異端裁定②

 戦いが始まってより、どれほど経過しただろうか。  乱戦ただならぬ中、指示を出しながらブライゼンはふと思う。  今が昼ならば、太陽の位置である程度の時間は推し量れる。しかし現在は夜。陽の代わりに月があればいいのだが、生憎今夜の空には厚い雲があり、その姿を探し出すことはできなかった。 「――一人で戦うな。必ず組になって敵を討て!」  いかに相手の数が多かろうと、一つの場所で戦える人数というのは決まっ […]

  • 2016.12.06

第38話 ドゥーク・ロー・ブライゼン異端裁定①

「ブライゼン様。斥候によりますと、僧会軍の本隊は二手に分かれ、コルントに向けてオルセシスを出発しました」 「そうか」  そう告げられて、ブライゼンは小さく頷いた。  報告しに来たのは、古くからラウンデンバーク家に仕えていた、元近衛騎士の者である。ブラフト・ダーン異端裁定で生き残ったものの、ゼルディアへとは向かわず、ブライゼンに付き従っている者は何人かいた。  彼も、その一人である。 「今日中に対峙 […]

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