「黎明ノ王Ⅰ」カテゴリーアーカイブ

第03話 妖魔の子

 パルティーン寺院。
 ジュリオン寺院ほどでは無いが、その大きさと格式の古さはそれに次ぐものがる。
 表向きはごく普通の大きな教会に過ぎないのであるが、実際の所は少々違っていた。
 今を遡ること約1200年前に、現在認められている異端の原点があるとされているが、それ以来、社会の闇の中で増え続けている異端者と呼ばれるものどもに対抗する為に、組織だったものが作られたのが、今から300年前だと言われており、その最初がアトラ・ハシースと呼ばれるものである。
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第02話 ネレアの契約

「――俺が?」

 異端裁定が終了してから数日後。
 フォルセスカはアルゼス・ラルティーヌと共に、ジュリオン寺院を訪れていた。
 アルゼスはフォルセスカよりも年上で、三十歳近くの年齢であるが、現在彼らの所属するパルティーン寺院の司教を務めている。ラルティーヌ家はこの地方では格式高く、彼は昨年夭折したアルゼスの父親に代わり、いずれは大司教を任されるであろう将来有望な人物だ。
 それに比べフォルセスカの僧職は司祭であり、アルゼスはその上司に当たるのであるが、年の差や身分などがあるにも関わらず、二人は親友だった。
 今は勿論、仕事上の関係を守ってはいるのだが。
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第01話 第二次ロネノス異端裁定

 闇の夜空に立ち上る、赤い炎と白い煙。
 その夜、小さな村が一つ、地獄の業火に見舞われていた。

 クリセニア侯爵領・ロネノス。

 中央から離れた侯爵領の、さらに田舎に位置するこの村は、大きな街道からも外れており、普段は人の出入りがほとんどない閉鎖された社会だった。
 誰もが知らぬこの村に、火の手が上がったのはこれで二度目。
 一度目は何とか耐え凌ぐことができた。しかしこの二度目は、あまりにも大き過ぎたといえるだろう。

「……夜明けまでには方が着くか」
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序章 漆黒の帳

 陽があって、光が意味を為さぬがごとく。
 密林の中、全き闇が凝る地に、その城はあった。
 いつからかゼル・ゼデスという名で呼ばれていたその城は、この二百年、沈黙を保ち続けている。
 眠りについていた、とも言えるかもしれない。
 しかし眠り、である以上、いずれは目覚めるもの。
 落ちて久しい帷――いつ明けるとも知れぬ夜の中、しかしその時は確実に迫ってきていたのかもしれない。

「……そう。では構わないのね?」
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