カテゴリー:黎明ノ王Ⅰ

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  • 2016.10.14

第13話 ある会談

 ナルヴァリア男爵の居城、オルセシス。  一般の者から見れば壮麗な城も、普段から侯爵家であるラウンデンバーク家に仕えているレダにしてみれば、さほど驚くようなものでも無い。  城内は特に慣れない空気でも無く、落ち着いてその場に控えていることができた。  この場所で、自分に口を開く機会など与えられてはいない。ただ主人の声がかかるのを、ひたすら待つのみだ。 「……まさかたった二人で来られるとは、正直驚き […]

  • 2016.10.13

第12話 街道にて

「――待ってもらおうか?」  どこか笑みの含んだ声に、その二人連れは足を止める。  その二人の周囲を、六人ほどの男が取り囲むようにして立っていた。 「危ないねえ……こんな夜中にたった二人で出歩くなんて」 「だから言ってるだろ? 馬鹿はいなくならねえって。まあおかげで俺たちゃ食ってけるわけだが」 「まったくだ。感謝しないとなぁ……」  口々に喋る男達は、ざっと見たところ、歳も背格好もバラバラだった。 […]

  • 2016.10.12

第11話 死神を手に

 パルティーン寺院のその場所にて、アルゼス・ラルティーヌは一人の赤子を腕に抱いていた。  その彼の前に佇む、一人の少女。こうして会うのは初めてであるが、今まで神託という形で、その声は幾度か耳にしている。  相手はまだ十歳前後の少女の姿をしていたが、それが見た目通りで無いことなど、その存在感から嫌というほど感じずにはおれない。 「――これは」  受け取った赤子を見ながら、アルゼスは少女へと尋ねる。 […]

  • 2016.10.11

第10話 もう一人の観測者

 あの子は失うかもしれない。  ずっと、レネスティアはそう言っていた。  まるで逃れられぬ運命かのように。そしてそのことを、彼女自身が受け入れてしまっているかのように。  ならばそれは運命なのだろう。  彼女の運命に添って歩むと決めた以上、自分もそれからは逃れられはしない。だがまあ、そういう言葉を使うことは、何となく無粋のように感じられはする。誰も聞いてはいないから、特に問題はないのであるが。

  • 2016.10.10

第09話 その発端

「初めから世界はあった。けれどそれだけでは何の意味もないわ。それを見て、何であるかを理解する者――つまり観測者の存在があって、初めてモノは意味を持ち、モノ足ることができる。わたしたちは、その最初の観測者ね……。だから根源二祖なんて呼ばれているわ。姉さん――エクセリアもそう。わたしたちは最初、感情なんてものを持ち合わせていなかったのでしょうね。ただあらゆるものを認識し、理解し、それらに意味を与えてい […]

  • 2016.10.09

第08話 死神誕生

 主がいながら、ずっと眠りについていた城。  渓谷一面に生い茂った森林の中に、その城はあった。  絶地にあるこの森に足を踏み入れる者などなく、その中にひっそりとそびえる城塞など、今では知られなくなって久しい。  魔城ゼル・ゼデス―――  かつての魔王クリーンセス・ロイディアンの居城だったというが、それも二百年以上昔の話で、今ではそんな当時を偲ばせるものは何も残ってはいない。  クリーンセスは当時、 […]

  • 2016.10.08

第07話 アトラ・ハシースとの決別

 鋭い剣戟が、建物の中に響き渡る。  振り下ろされた一撃を受け止め、弾き返し、反攻に出るも、すぐさま受けられる。 「……こうやって刃を合わせるのは初めてだな」  ギリギリと鍔迫り合いをしながら、アルゼスが言う。  彼もまた、ただの司教ではない。  ミルセナルディス枢機卿に代わり、アトラ・ハシースの統率をしているだけの実力はある。 「まったくさすがだ。俺は若さだけが取り柄だからなあ……!」

  • 2016.10.07

第06話 レダ・エルネレイス

 突然と言って良いほど何の前触れも無く、その日は来た。  常に彼の部屋に閉じ込められていたので、彼の部屋以外に出たことは無い。それが今日初めて、外を歩くこととなったのだ。深夜にいきなり起こされたことを怒るよりも、不安が先立つ。  夜には違いないが、それでも夜明けが近いのか、空は微かに蒼みがかっているような気がする。  ――それでもやはり暗く、明かりも無く。  ただ二人の足音だけが響く。  フォルセ […]

  • 2016.10.06

第05話 禁断の誘惑

「俺の、命だと?」 「そう……貴方の命を」  表情を変えることなく告げる少女を見て、フォルセスカは苦く笑う。  全くいきなり―――何ということを言ってくれるのだろうかこの少女は。 「自分で言うのも何だが、この俺の命、そう安くはないぜ?」  意外にもあっさりと、彼女は頷いた。 「わかっているわ……だからこそ、貴方が欲しい。姉さんには渡したくない」 「……姉さん?」 「そう……姉さんよ。貴方は明朝、エ […]

  • 2016.10.05

第04話 悪魔との出会い

 妙なことというものは、起こる時には立て続けに起きるらしい。  ロネノスで幼女を拾ってから約二ヶ月。  ネレアの契約などという、訳の分からないものを押し付けられてまいっていたら、今度は幻聴まで聞こえるようになったという始末だ。 「――誰だ?」  フォルセスカは読みかけていた本を閉じると、周囲を見渡す。  余人には入ることは叶わない、パルティーン寺院の第三層にある蔵書保管庫に、元より自分以外はいない […]