「黎明ノ王Ⅰ」カテゴリーアーカイブ

第18話 舞踏会にて

 年に一度、侯爵家で催す舞踏会は、王室の行うものに比べれば見劣りするものの、ひとまず盛況のようだった。
 舞踏会は今日、明日と催される予定で、周辺の貴族達の姿が大広間に見て取れる。
 とはいえこれはあくまで侯爵家が個人的に主催しているもので、全ての諸侯の姿があるわけでもない。侯爵家に親しい者や、世話になったものなど――またこれからそうなりたい者などが、参加している程度である。無論、礼儀ということで他の有力諸侯の顔ぶれも見えるが、そういった貴族の参加はあくまで今日一日だ。今夜、もしくは明日の早朝には自分の領地に引き上げるだろう。
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第17話 裁定会議

 レイギルア・ミルセナルディス。
 今ではその名すら正しいのかどうか定かでは無いが、その名を持つ人物こそが、現在に至る異端の原点とされている。
 それが、約1200年前のこと。
 最初の魔王である彼の血は人間と交わり、多くの異端を世に生み出したという。
 その後、異端の血は途絶えることは無かった。魔王は死しても、また新しい魔王が選ばれる。
 悪魔、とされる存在がそれを見出すという。それとも、そのようなものを見出す存在を、悪魔と呼んだのか。
 とにかくこの1200年の間に幾人かの魔王が現れ、そして異端の者を広げていった。今ではただの人間すら、そんな彼らに惹かれ、崇拝する者達までいるという始末だ。いや、恐らくは今に始まったことでもなかろうが……。
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第16話 再会

 故郷までの道。
 それは一切変わってはいなかった。
 遠くに見える山、道沿いに広がる林に、時折目につく小川……。
 変わってしまったのは、故郷そのものなのだから。

「…………」

 こうやって雑草に埋もれてしまった故郷を見ると、本当にここがロネノスだったのかと思ってしまう。
 あれから一度も訪れたことは無い。完全に人々に忘れ去れたような有様に、レダは知らず吐息をついてしまっていた。
 きっともう戻らない……。
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第15話 邂逅の意味

「長居させていただいた。有益な情報、感謝いたすぞ」
「いえ……。それよりも侯爵夫人、努々お気をつけ下さい」

 立ち上がったプラキアへと、それに倣って立ち上がったアレイウスは、再三気遣うように言った。

「わかっておる。また僧会に不穏なことあれば、教えて欲しい。――死神についても」

 死神が生まれたという六年前より今までの間、もしアレイウスが語ったようにずっとアトラ・ハシースの中にいたとしたら。
 連中は、死神をどうするつもりなのか……。

(まさか、御せるとも考えてはなかろうに)

 そう思いたいが、思い切れない。
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第14話 廃村にて

 その場所に何があったのか、今になっても察することができる。
 焦げ落ち、崩れた木材を覆うようにして生えた、雑草―――
 かつてロネノスと呼ばれたその村は、最後の状態のまま復興されることなく、この七年間放置されたままだった。

「……何とも心荒む光景だな」
「――全くじゃのう」
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