カテゴリー:黎明ノ王Ⅰ

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  • 2016.10.24

第23話 ブラフト・ダーン異端裁定③

 その名に、黒い服の少女は反応した。  信じられないくらいに明確に。 (……名は残しておいてくれたというわけか)  あの夜、赤子を奪った少女の顔を思い出しながら、皮肉げにフォルセスカは思った。  しかし経緯はどうあれ、かつて自分のつけた名に振り向いてくれたことは、やはり嬉しかったのかもしれない。  そのせいか、先ほどまで厳しかった彼の表情も、どこか緩んでいた。

  • 2016.10.23

第22話 ブラフト・ダーン異端裁定②

 やはり、相手は強い。  フォルセスカはようやく三人目を切り伏せたが、ただの僧兵を相手にするのとは比べ物にならない時間を要してしまった。  それでも彼自身に未だ傷は無く、疲れもみえない。レネスティアとの契約によって、この身体はもはや完全に人間のそれではなくなったのだろう。普段に実感は無いが、今は頼もしき限りだ。  だがアトラ・ハシースの者は、まだまだいる。  果たしてこの先どうなるか……。  その […]

  • 2016.10.22

第21話 ブラフト・ダーン異端裁定①

 ブラフト・ダーン城が見えなくなってから、どれほど時間が経過しただろうか。  見えないと分かりながらも、レダは時折振り返ることをやめることはできなかった。  今頃どうなっているのか――あそこに残った者達のことを思うと、こうして歩いていることすら罪のような気がしてくる。  それでも真っ先に脳裏に浮かぶのは、あの青年のことだ。  本当に――また無事で会えるのだろうか。

  • 2016.10.21

第20話 暗殺者

「――――!?」  プラキアに庇われ、レダは何が起こったのか一瞬分からなかった。  燭台から溢れた火が、突然自分に向かってきたのは覚えている。だがその刹那、プラキアがレダを抱きかかえるようにして庇ったのだ。 「…………」  レダを自分の身体で隠しながら、左手でその炎を受けたプラキアは、冷静に相手を見ていた。  咄嗟に張った結界のおかげで炎の直撃は免れたのだが、その威力はかざした左の掌に、火傷の跡を […]

  • 2016.10.20

第19話 忍び寄るもの

「おや。これはブライゼン殿……姿を見ないと思ったら、こんな所におられたのか」  夜風の当たるテラスへと出たフォルセスカは、すでにその場にいた人物へと声をかける。  彼も正装しているが、色は相変わらずの漆黒だ。  ドゥーク・ロー・ブライゼン。  あまり表情をみせないこの青年は、ロノスティカから一番の信頼を受けている側近である。

  • 2016.10.19

第18話 舞踏会にて

 年に一度、侯爵家で催す舞踏会は、王室の行うものに比べれば見劣りするものの、ひとまず盛況のようだった。  舞踏会は今日、明日と催される予定で、周辺の貴族達の姿が大広間に見て取れる。  とはいえこれはあくまで侯爵家が個人的に主催しているもので、全ての諸侯の姿があるわけでもない。侯爵家に親しい者や、世話になったものなど――またこれからそうなりたい者などが、参加している程度である。無論、礼儀ということで […]

  • 2016.10.18

第17話 裁定会議

 レイギルア・ミルセナルディス。  今ではその名すら正しいのかどうか定かでは無いが、その名を持つ人物こそが、現在に至る異端の原点とされている。  それが、約1200年前のこと。  最初の魔王である彼の血は人間と交わり、多くの異端を世に生み出したという。  その後、異端の血は途絶えることは無かった。魔王は死しても、また新しい魔王が選ばれる。  悪魔、とされる存在がそれを見出すという。それとも、そのよ […]

  • 2016.10.17

第16話 再会

 故郷までの道。  それは一切変わってはいなかった。  遠くに見える山、道沿いに広がる林に、時折目につく小川……。  変わってしまったのは、故郷そのものなのだから。 「…………」  こうやって雑草に埋もれてしまった故郷を見ると、本当にここがロネノスだったのかと思ってしまう。  あれから一度も訪れたことは無い。完全に人々に忘れ去れたような有様に、レダは知らず吐息をついてしまっていた。  きっともう戻 […]

  • 2016.10.16

第15話 邂逅の意味

「長居させていただいた。有益な情報、感謝いたすぞ」 「いえ……。それよりも侯爵夫人、努々お気をつけ下さい」  立ち上がったプラキアへと、それに倣って立ち上がったアレイウスは、再三気遣うように言った。 「わかっておる。また僧会に不穏なことあれば、教えて欲しい。――死神についても」  死神が生まれたという六年前より今までの間、もしアレイウスが語ったようにずっとアトラ・ハシースの中にいたとしたら。  連 […]

  • 2016.10.15

第14話 廃村にて

 その場所に何があったのか、今になっても察することができる。  焦げ落ち、崩れた木材を覆うようにして生えた、雑草―――  かつてロネノスと呼ばれたその村は、最後の状態のまま復興されることなく、この七年間放置されたままだった。 「……何とも心荒む光景だな」 「――全くじゃのう」

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