「黎明ノ王Ⅰ」カテゴリーアーカイブ

第23話 ブラフト・ダーン異端裁定③

 その名に、黒い服の少女は反応した。
 信じられないくらいに明確に。

(……名は残しておいてくれたというわけか)

 あの夜、赤子を奪った少女の顔を思い出しながら、皮肉げにフォルセスカは思った。
 しかし経緯はどうあれ、かつて自分のつけた名に振り向いてくれたことは、やはり嬉しかったのかもしれない。
 そのせいか、先ほどまで厳しかった彼の表情も、どこか緩んでいた。
続きを読む 第23話 ブラフト・ダーン異端裁定③

第22話 ブラフト・ダーン異端裁定②

 やはり、相手は強い。
 フォルセスカはようやく三人目を切り伏せたが、ただの僧兵を相手にするのとは比べ物にならない時間を要してしまった。
 それでも彼自身に未だ傷は無く、疲れもみえない。レネスティアとの契約によって、この身体はもはや完全に人間のそれではなくなったのだろう。普段に実感は無いが、今は頼もしき限りだ。
 だがアトラ・ハシースの者は、まだまだいる。
 果たしてこの先どうなるか……。
 その矢先、だった。
 フォルセスカを囲んでいた数人の者が、悲鳴を上げて倒れ伏す。見れば、黒い騎士の者達が背後から斬りかかったのだ。
続きを読む 第22話 ブラフト・ダーン異端裁定②

第21話 ブラフト・ダーン異端裁定①

 ブラフト・ダーン城が見えなくなってから、どれほど時間が経過しただろうか。
 見えないと分かりながらも、レダは時折振り返ることをやめることはできなかった。
 今頃どうなっているのか――あそこに残った者達のことを思うと、こうして歩いていることすら罪のような気がしてくる。
 それでも真っ先に脳裏に浮かぶのは、あの青年のことだ。
 本当に――また無事で会えるのだろうか。
続きを読む 第21話 ブラフト・ダーン異端裁定①

第20話 暗殺者

「――――!?」

 プラキアに庇われ、レダは何が起こったのか一瞬分からなかった。
 燭台から溢れた火が、突然自分に向かってきたのは覚えている。だがその刹那、プラキアがレダを抱きかかえるようにして庇ったのだ。

「…………」

 レダを自分の身体で隠しながら、左手でその炎を受けたプラキアは、冷静に相手を見ていた。
 咄嗟に張った結界のおかげで炎の直撃は免れたのだが、その威力はかざした左の掌に、火傷の跡を残している。
 とりあえず彼女達は無事であったが、プラキアと相手との直線状にいた何人かが火だるまになったまま、苦悶の声を上げて倒れていく……。
 次々に、大広間から悲鳴が上がった。
続きを読む 第20話 暗殺者

第19話 忍び寄るもの

「おや。これはブライゼン殿……姿を見ないと思ったら、こんな所におられたのか」

 夜風の当たるテラスへと出たフォルセスカは、すでにその場にいた人物へと声をかける。
 彼も正装しているが、色は相変わらずの漆黒だ。
 ドゥーク・ロー・ブライゼン。
 あまり表情をみせないこの青年は、ロノスティカから一番の信頼を受けている側近である。
続きを読む 第19話 忍び寄るもの