カテゴリー:終ノ刻印Ⅰ

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  • 2017.06.22

第13話 腕試し

        /茜 「―――間違いない」  眼下に町を見下ろしながら、私は低くつぶやいた。  この町はとても明るい。とっくに深夜を回っているというのに。  もっとも全てがといわけでもない。一部の繁華街に光が集っているだけで、人も寝静まってかなりたつこの時間では、闇に沈んだ場所の方が圧倒的に多いのだから。  風が吹く。  身に染みる寒さを運ぶ風に、血の香は無い。が、それでも――残滓は残っている。 […]

  • 2017.06.21

第12話 京都見物

 京都市内のいいところは、まず迷子にならないことと、バスが多いことだ。  もちろん、これは田舎出身の俺の意見であって、一般的な見解ではないので悪しからず。  碁盤の目に配置された道と、どんな細い道にも名前がついているおかげで、どこにいても大体場所を把握できる。  全ての道の名前を覚えるのは、地元人でもない限りちょっと無理だが、大きくて主要な道はすぐ覚えてしまうものだ。  南北に走っている大きな道と […]

  • 2017.06.20

第11話 忍び寄る不安

        /由羅  不思議だった。  とてもとても、不思議。  あの人間――桐生真斗。  彼は不思議だった。  近くにいても、全然違和感が無いのだ。  今まで人間の傍にいくと、無性に不愉快になり、目障りで仕方が無かったというのに。  そういう人間を狩りの対象にすることは、とても気持ち良くて。  あの支配感を満足させるには、殺すのが一番だった。

  • 2017.06.19

第10話 手助けだとしても

 事務所へと戻った。  急いで戻りはしたが、あの公園からここまではそこそこ距離がある。  ここに来るまでの間にだいぶ出血したようだったが、由羅はまだ大丈夫のようだった。こいつは実はけっこう大した奴なのかもしれない。  とにかく俺は急いで戻ると、所長の姿を捜した。  いつの間にかお開きになったのか、誰の姿も無い。 「……ん?」  ――と、声。  見れば所長が、休憩室に使っている隣の部屋から出てきたと […]

  • 2017.06.18

第9話 酔い覚ましにしても

 歓迎会が始まって、二時間近く。  いつもよりやたらめったらテンションの高い東堂さんのせいもあって、適度に盛り上がってはいた。  よほど最遠寺がやってきたのが嬉しかったらしい。いい歳して、まるで子供のようなはしゃぎ様である。  で、その東堂さんはいつも以上のペースで酒を飲んだせいか、早々にダウンしてしまっていた。いかにも幸せそうな顔で、引っくり返っている。

  • 2017.06.17

第8話 次の出会い

        /由羅  私がこっそり住み着いているマンションの前で、私は降ろしてもらった。  サイズが大きかったせいか、バイクで走っていると風圧で後ろに流れて、顎のベルトで何とか止まっている状態だったヘルメット。  こんなの意味ないじゃないと言って返すと、文句言うなと言われてしまった。  ふんだ。何よ、偉そうに。 「けっこういいとこに住んでるんだな」  大きなマンションを見上げて、少し感心したよ […]

  • 2017.06.16

第7話 刻印

 彼女の左手に刻まれていた紅い刻印。  確かこれは……。  その印の意味――俺も知識としては知っていた。かつてそういった知識を習っていた九曜家に、その刻印咒があったことは覚えている。  本来ならば、決して習う類のものではない。  これは九曜家にとって、門外不出の刻印。それを俺が習えるはずもなかったが、何の偶然か、俺はそれを知ることができて。  ……そう。  ずいぶん昔のことだ。  とある奴が、俺に […]

  • 2017.06.15

第6話 由羅という名の

        /由羅  ……え?  また驚かされてしまった。  斜め前に座っている人間が振り返る――そうすれば、何らかの反応があるはずだったのに。  いや、あるにはあったのだが、どうも予想していたのと違う。  彼はきょとんとして数瞬こちらを見つめた後、さっさと渡すものだけ渡して正面を向いてしまったのである。――その後の反応は、無し。  なんで……?  またまたわけが分からなくなった。  この人間 […]

  • 2017.06.14

第5話 それぞれの目覚め

        /由羅  ――痛い。  痛くて……目が覚める。  夜明けしていくらかたったせいか、部屋の中はすでに明るかった。  いつもは殺風景な部屋。  けど今は……滅茶苦茶だった。  私が揃えた数少ない調度品が、あちこちに散らばって、中には砕けてしまっているものもある。  数時間前にここに帰ってきた私が、暴れて壊してしまったものたち。  痛くて、痛くて……どうしようもなくて。  いつの間にか眠 […]

  • 2017.06.13

第4話 幼馴染からの餞別

        /真斗  落ちこぼれ。  あまり認めたくないことではあったが、残念ながら俺はそういうレッテルを貼られてしまっていた。  俺自身は認めたつもりはなくても、周りの目は間違いなくそう言っている。  実際――自覚が無かったわけでもない。 「……相変わらず弱いな。お前」  挑んだ俺をこてんぱんにのしてくれたその少女は、後でそんなことを言ってきた。 「悪かったな。くそう」  不貞腐れたように引 […]